精神鑑定士の助手として、残忍な殺人犯の精神鑑定に関わることになった、小川香深。鑑定が進むにつれ、男に多重人格の症状が現れ始める。鑑定を行った教授は、被告は多重人格だという鑑定を下すが…。
いわゆる「法廷モノ」にも関わらず、この映画は、実は、この被告が多重人格かどうか、その秘密を探ったり、謎解きをすることを目的にしていない。だから、証拠集めに奔走する助手もいないし、尋問や精神鑑定のシーンも少ない。種明かしをしながら、ストーリーが進んでいくようなもので、見ていて疑問も何も感じない。
特に大きな山場もなく、「ふむふむ…」と見つづけてラストに至る。このラストが、見た目には「失敗」なのだけど、本当は「成功」(もしくは正義)ってところに深さがあるんだと思う。その題のとおり、「刑法第三十九条」――責任能力の有無を問う――というメインテーマに、最初から最後まで貫かれていることが見終わった後に分かる。
最近、精神鑑定で無罪になる…といった事件が確かに多い。それから、未成年が未成年であることを逆手にとっておこす事件も…。
「喉もと過ぎれば…」で、犯人が捕まると忘れてしまいがちな事件の問題性。映画には「娯楽」としての役割のほかに、時にはこの映画のように「問題提起」をする必要があるように思う。この映画はその部分を正確にえぐっている。
それにしても――なんでこの登場人物はみんな「つぶやく」んだろう。声が聞き取りにくいっつーの。ほんとに。ボリュームを上げたり下げたり大変。
しかし、堤真一はすごかった。それから、これも超個人的だが、まさに今日、ぶらついてきた北九州市の門司港界隈が舞台になっているのも興味深かった。
邦画を見ると「これなら2時間ドラマで十分」と思うこともあるが、これは違う。見ごたえがあって、面白かった。
<2002.3.10>
■データ
出演:鈴木京香、堤真一、江守徹、山本未来、勝野政信、樹木希林
監督:鈴木芳光